「僕たちの挑戦」 あとがき

あとがき

 僕が小学生の頃、まだまだ子供の楽しみは限られていました。今と違ってゲーム機もパソコンもありませんでしたし、テレビも一家に一台、チャンネル権は大人が握り、見たい番組もなかなか見ることが出来ません。でも、そうした時、子供は必死になって自分で楽しみを見つけていきます。
 
 僕の父はなぜだか野球嫌いで、僕は小学校六年生になるまで生の試合観戦はもちろんテレビ中継でさえ一度も見たことがありませんでした。プロ野球では巨人がV9を達成した昭和40年代、王、長嶋の全盛期を一緒に生きながらその姿をリアルタイムで一度も見たことが無いという稀有な小学生時代を過ごしました。
 六年生の時に初めて友達からプロ野球の面白さを教わりました。パンドラの箱を開けた僕はプロ野球に熱中します、テレビ中継を見ることはできませんが、新聞のスポーツ欄を見て全ての試合結果、勝利投手、ホームランなどの記録を大学ノートに書き記していったのです、毎朝早起きして新聞を見るのが無上の楽しみで、今思えば不自由がゆえ、逆に幸せだった気がします。
 
 さて、そんな子供の頃の一番の楽しみはいわゆる「連続」ものでした。テレビアニメでも、少年週刊誌でも、小学生新聞の小説でも、一話完結ではなく「つづく」の文字と共に時には次週の予告がなされ「ああ、このあとどうなるのだろう・・」「来週が待ち遠しい!」そんな気持ちで胸をときめかせていたものです。あの何とも言えない期待感は1週間を生きていくエネルギーと言えたかもしれません。

 「僕たちの挑戦」の原案ができたのは、今から25年以上も昔のことです。僕はとある公立中学校で先生をしていました。新米先生が初めて受け持った三年生、初めて卒業生として送り出すことになる生徒たちです。文化祭でクラスごとに出し物を出すことになりました、そして、みんなで話し合った結果「映画」を撮ろうということになったのです。撮影はちょうど8ミリのハンディカムが出始めた時期で、編集も含め素人でも何とか可能です。問題は「シナリオ」でした。僕はうっかり「まかせとけ!」などと言ってしまったのです。さあ、それからが大変、まかせろとは言ってみたものの、それまでシナリオなど書いたことがありません、「うーん・・」僕はうなり続けるばかりです。
 そんなある夜、僕の頭の中に、ある「セリフ」が思い出したように浮かんできたのです。それは小学生の時に見ていた連載テレビドラマ、NHKの「少年ドラマシリーズ」の中に出てきたセリフです。題名は「君はサヨナラ族か」。「少年ドラマシリーズ」の数ある作品の中でも最も知名度の低い作品かも知れません。冒頭のテーマソングの歌詞の中にこんなセリフが出てきます。

 「さよなら・・僕はここに残る。みんな行ってしまうのか・・」

 このフレーズが僕の頭の中でなぜだかとりついたように繰り返されます。

 「みんな行ってしまうが、僕は一人でもここに残る」

 この「一人ぼっちになる寂しさ」に立ち向かってまでも貫き通す「強い意志」が僕の心を惹きつけてやまなかったのです。
 たしか2週間くらいかかったでしょうか、僕はこのセリフをモチーフに悪戦苦闘しながら一冊のシナリオを書き上げました。それが「僕たちの挑戦」です。
 
 作中でユカの言葉を聞いた仲間たちが未来に行くことをやめると決心するシーンが出てきます。みんなが安堵し大団円を迎えると思った瞬間、ロクが一人だけ「僕は未来へ行く」と言い放ちます。あの場面こそがこの物語の原点なのです。
 映画「僕たちの挑戦」は文化祭で無事20分間の短編として陽の目を見ることができました。主役を演じた女の子が大人になり結婚式に招待してくれた時、僕はこの映画のビデオをお祝いに手渡しました。
 
 それから20年以上が過ぎ、学校の先生を辞めた僕は一つの「夢」を持ちます。それは、小学生や中学生が「次回が待ちきれない!」と思ってくれるような連載小説を書いてみたいというものでした。そして、僕はあの文化祭で書いたわずか10枚足らずのシナリオを引っ張り出してきました、小説に書き直してみようと思ったのです。
 書き始めてみると、それだけで楽しく、初めは一人満足していました。「書いていると登場人物が勝手に動き出すよ」なんていう伝説も本当に体験したものです。

 一年ほどかけ、ひとまず完成すると今度は誰かに読んでもらいたいという思いがムクムクと頭をもたげてきます。現代は便利な世の中でネットという場を借りれば、多くの人に読んでもらうことも可能です。僕は毎週特定の曜日に更新という形で「模擬連載」を1年ほど続けてみました。その中には少ないですが毎週読んでもくれる人も現れました。
 ただ、ネットではどうしても小学生や中学生はなかなか見に来てくれないのです、僕は悩みました。「やっぱり本の形でないと読んでもらえないのかな・・」と。児童文学の文学賞に応募もしましたが入選は叶わず、いくつかの出版社に持ち込むも挫折し。もう無理なのかなと半ば諦めかけていました。
 
 でも「夢は追い続ければきっと叶う」ユカのハハの言葉が僕に勇気を与え続けてくれました。今回、縁あって文芸社さんから出版のお誘いをいただきました、はたして本当に人に読んでもらえるレベルだろうか・・と不安もありましたがそこは「勇気!」ネット発表時のものから中味もかなり書き足し修正し、30年近くあたため続けてきた大切な作品を世に出すことが出来ました、僕は本当に幸せです。
 
 この物語が一人でも多くの小学生や中学生に読んでもらえることを願って止みません。そして、読んでくれた子供たちがこれまた一人でも多く自分の「夢」を大切にしてくれたら・・それだけでこの「物語」も心からの幸せ者です。      

  

 

僕たちの挑戦


 ブログを訪れてくださった皆さん、どうもありがとうございます。
 拙作ですがお読みいただければとてもうれしいです。
 「掌の小説」もアイデアに貧窮しつつ頑張って書いていきたいと思います(^^)
 引き続きよろしくお願いいたします。

 尾道貴志










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.08 2016 小説 comment2 trackback0

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尾道貴志
みんもっこす さんへ

ありがとうございます!
だいぶ時間がかかりましたが、あきらめずに頑張ってみました(^^)
みんもっこすさんも頑張ってください。
出版の暁には知らせてくださいね!

僕もそろそろブログを更新しなくちゃ・・・

では、また。
2016.07.18 12:04
みんもっこす
ご出版おめでとうございます。
文芸社で出すということは、JANコードも取得して、
書店に並び、国立図書館?にも永年保存されるということですよね?
羨ましい限りです。
私も、定年したら退職金で自費出版したいと思っています。
それまでに、文章の力を上げておかないと・・。
2016.07.17 22:49

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