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駅前の商店街を抜けると景色は一変し閑静な住宅街に・・
その先の桜並木が続くなだらかな坂を登りきった所に「聖海学園中学校」がある。

誰もが知る名門の進学校だ。

校門に向け足を進める数知れぬ受験生たち・・

すでに合格発表の掲示はされている時間だ、風に乗り微かに歓声らしき声が聞こえてくる。

「ママ、何でそんなに心配そうな顔してるの?」
「何でって、心配なのは当たり前でしょ・・」
「僕が落ちるわけないじゅない、模試でもずっとトップ10に入ってたし、楽勝さ」
「でもね、晃、あなた真面目に勉強してなかったでしょ?」
「だって、そんなにガツガツやらなくたってテストできちゃうんだから、みんなとは違うんだよ」
「世の中、そんなに甘いもんじゃないのよ、努力は大切なの」
「努力?僕には必要ないよ」
「新一君だって、和也君だって、必死にやってたじゃない」
「あいつらは能力が低いからさ、あんなに勉強してたって一度も僕に勝てなかったでしょ」
「・・・」
「今日帰ったらパーティーを開いてね、ユカちゃんも呼んでお祝いするんだ」


校門をくぐる。
晃は揺るがぬ自信とともに合格発表の掲示板の前に立った。

「さてと・・3939 何しろ サクラサク だからね、ママ」
「3920 3933 3938 3941・・・」
「えっ!ない、ないよ!」
「・・・・」
「そんなことあるはずないよね、そうだ、特待生の掲示板は別にあるんだ!」

晃は小走りに特待生合格の掲示板へ

「ない・・」

目を皿のようにして何度も見直す、プライドが傷つくのを隠しつつ補欠合格者の発表場所も・・・

どこを探しても晃の番号はなかった。



その日を境に晃を取り巻く「空気」が一変した。

「新一君、どうだった?」
「受かったよ、和也も一緒さ」
「晃君、落ちたんだって?」
「・・・」
「さんざん僕らをバカにしてたのにね、こういうのを皮肉な結果っていうのかな、国語で習ったよね」
「たまたま調子が悪かったんだ・・」
「僕らもそんな時はあったさ、でも実力だっていつも晃君に言われてたよね」

遠ざかる際に晃の耳にかすかな声が聞こえてきた。
(いい気味だ)
(ざまあみろ・・)

「あっ、ユカちゃん!」
「晃君・・受験失敗しちゃったんだってね・・聞いたわ」
「うん・・」
「第2志望とか滑り止めとか?」
「受けてない・・僕が落ちるはずないんだ、きっと何かのミスなんだよ!」
「みんな話してるわ、かわいそうだけど伝えるわね」
「えっ、何て?」
「努力しない人が落ちて正直うれしいって・・」
「そんな・・・」


地元の公立中学校に進学した晃はなかなかクラスに溶け込めなかった。
心の隅にある「僕はこいつらとは違うんだ」というプライドが知らず知らずのうちに友を拒絶した。
やがて完全なる不登校に・・・

「お前が甘やかすからこうなったんだ!」
「何よ、仕事ばかりですべてをあたしの責任にして!」

晃は閉じこもった自分の部屋から毎日のように両親の争う声を聞いた。

諍いは半年あまり続き、やがて父は

「お前とはやってられん!」

そう言い残して家を出て行った。

晃は言い表せないほどの不安と焦りを母にぶつけた。
家庭内暴力という形で・・
精神は幼いまま、身体だけは大きくなっていた晃に、母はなす術がなかった。

ある日・・日夜逆転の生活をしていた晃が夕方目覚めると・・

枕元に母の姿がぼんやりと見える・・

起き抜けの眠い目をこすりよく見ると・・その手には金属バットが!!

「わーっ やめろ!!やめてくれっ!!」

やがておぼろげな意識の奥に聞こえるサイレンの音・・・




「はい、終了です」

奥のブースの重い扉がゆっくりと開き、晃が震えながら出てきた。

「ママ、早く帰ろう」
「そんなに急いでどうしたの?」
「僕、勉強しなくちゃ、今すぐ帰って勉強したいんだ」
「朝はあれほど嫌がっていたじゃない?」
「何言ってるのさ、努力しなくちゃ、合格できるわけないだろ!」
「そう、わかったわ、すぐ行くからロビーで待っててね」


晃が出て行った後のカウンセリング室で母はあらためて感心したように目の前の若い男を見つめた。

「いかがでしたでしょうか?」
「驚きました、あんなに急に変わるなんて」
「ありがとうございます、我がモチベーション学院では何より生徒さんのやる気を大切にしております」
「やる気ですか?」
「はい、受験勉強というものは強制されてやっている間は決して伸びないものです」
「なるほど」
「自らが学習したいという意識を持つ、そのために本日はお時間を取らせていただきました」
「今日の体験授業のお支払いを」
「いえ、本日は無料でございます」
「それは、ありがたいですわ」
「当学院では、入塾にあたりまして、生徒さんに合わせたやる気システムを脳内で体験していただいております、努力しても結果が出ない生徒さんには成功体験をプログラミングしたコースを、晃君のように受験を甘く考え、努力を怠るタイプの生徒さんには逆に失敗体験をプログラムし疑似記憶として送り込みます」
「あの子の、生半可な頭の良さからくる自信過剰と周りを見下す態度には親として本当に心配していたんです」

「ええ、事前に伺っておりました。マイナスのプログラムには本来『落胆コース』『失望コース』のどちらかでご体験いただくのですが、本日はサービスといたしまして普段小学生には使用しない『絶望コース』をご体験いただきました。更にオプションとして『戦慄プラン』をこれまた特別サービスとして無料で付けさせていただきました」

「効果はご十分かと」
「そのようですわね」
「では、ご入塾ということで」
「はい」


「では、来週からの電脳教師をお選びいただきます、晃君の性格からして私のオススメは、こちら、スパルタタイプの・・・」




塾





※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。












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.26 2016 小説 comment2 trackback0

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尾道貴志
miss key 様

仕事が超多忙にてお返事が遅くなりました🙇

西岸良平氏のマンガ 「蜃気郎」 の中に何でも正解できるペンを手に入れた男の悲劇を描いた作品があり、それをヒントに書いてみました。

中国や韓国の受験競争はすごいそうですね。

世知辛い世の中になったもので、でも、小説の題材としては面白いですね(^^)

次も受験をテーマて☺️
2016.02.04 20:18
miss.key
 ひいぃぃぃぃ。怖い。
 しかしやり直しが出来て良かったねぇ。大抵やり直しがきかずに終わっちゃうもんなんだけど。
 とある漫画でありました。やり直しがきかない人生なんてあんまりだからやり直す機会を一度だけあげるというものでした。主人公は選択を迫られます。が、実はそれは手違いでやり直した後だったという落ち。
 何が良いのか悪いのか。やり直せると思うと頑張らないのが人ですし。
2016.01.31 12:01

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