静かな贈り物

某国 国防省

「どうだ、交渉の進捗は?」
「予断を許さぬ状況です」
「開戦もやむなしか・・」
「そんな生易しいものじゃありません!」
「どういうことだ?」
「核ミサイルの発射を仄めかしています」
「世界が終わるぞ!」
「やつは本気です・・言わば世界を巻き込んでの自爆テロかと・・・」
「手はないのか?」
「大統領がホットラインで対峙するとのことです、それが最後の・・」



日本 とある病院の一室

「先生、息子の状態は?」
「残念ながらもはやギリギリのところです」
「まだ、10歳なんですよ!何とか助けてください!」
「毎日、一つずつ病が重なっていく・・視力を失ったのは確か」
「4歳の時です、私が事故で目を怪我して・・」
「ひどい怪我だったそうですね」
「失明も覚悟したのですが、運よく免れたんです、ところがその直後に息子が病にかかり光を失いました」
「・・・」



某国 大統領執務室

「大統領閣下、ご決断を」
「バカげた相談だ、君たちにとっての異教徒を全て監禁せよなど」
「決して冗談で言っているわけではないのですよ、閣下」
「君は神にでもなったつもりかね」
「さあ、ここにある核ミサイルのボタンを押せば神になるかもしれませんな」
「その瞬間、同じものが君の下へと飛んでいく」
「いいじゃないですか、我々は死を恐れぬ、死が怖いのは大統領閣下、あなたではないのですか?」
「・・・狂ってる」



日本 小児病棟の一室

「先生、1年前、私が脳出血で倒れて生死の境をさまよった時、夢の中にこの子が現れたんです」
「うかがいます」
「ぼくがママを助けてあげるって」
「優しい子だ」
「私は九死に一生を得ましたがその時からこの子は体の自由を奪われました」
「あまりにもお気の毒で言葉が出ません・・」
「この子はまるで私たち夫婦の身代わりに・・そんなことってありえませんよね」
「もちろんです」



某国 国防省

「ホットラインを聴かれましたか?」
「ああ、もう一刻の猶予も許されん、迎撃態勢に入れ、やつは本当にぶっ放す、何としても空中で仕留めるんだ」
「はい、迎撃態勢に入ります」
「おそらく一発じゃないぞ」
「全てを打ち落とします!!」
「もし一発でも迎撃できなければ・・」
「我が国の報復装置が稼働します」
「世界中を核ミサイルが飛び交うことになる・・人類の破滅だ」
「仮に50発撃たれたとして全てを打ち落とせる確率は?」
「・・・」
「低いのか?」
「1%に満たないかと・・」



少年 問いかける声

「やあ」
「君はだれだい?」
「僕は・・生まれる前の君かな」
「どういうこと?」
「もうこの世にはいないってこと」
「なぜ死んでしまったの?」
「たくさんの人たちの苦しみを背負いきれなくなったんだ」
「そうなんだ・・」
「苦しくないかい?」
「ものすごく苦しいよ、でも慣れてるから」
「君を助けてあげるよ」
「そんなことできるの?」
「君が望めばね」
「ふーん」
「目が見えるようになりたい?それとも体が動くようになりたい?」
「できるの?」
「その代りだれかほかの人が目が見えなくなったり、体が動かなくなったりするけど」
「それはパパやママ?」
「わからないな」
「ぼく、それはいやだな、誰かが悲しむのはいやなんだ」
「そう・・それで君の願いは?」
「世界中のみんなが仲良くなれたらいいな」
「そのために君が命を落とすことになっても?」
「・・・うん」
「わかったよ」
「仲良くなれる?」
「なれるさ・・素敵なプレゼントだね」



某国 国防省

「レーダーに10発のミサイルを確認!迎撃せよ!!」
「緊急事態!全員配置につけ!!」
「お前たちに地球の生死がかかっている!死に物狂いで落とせ!!」



少年

「ぼく、眠くなってきた」
「もうすぐ僕のいるところへ来るんだよ」
「そうなんだ・・どこなの?」
「来てみればわかる、いいところさ」
「そう・・ねぇ君の名前を教えてよ」
「僕かい・・・僕はジーザス」
「ありがとうジーザス・・・」



某国 国防省

「閣下!レーダーからミサイルが消えました!」
「どういうことだ?」
「全く持って不明です」
「迎撃に成功したのか」
「いえ、本来なら今頃は世界中が火の海になっているはず・・」
「奇跡か・・」
「わかりません・・でもそう信じましょう・・」
「神よ・・」



日本 とある繁華街 

「てやんでい、何がクリスマスだい、どいつもこいつも浮かれやがって、全くこう不景気じゃ飲まずにいられるかってんだ!」

街を流れるクリスマスソング。

「何がキリストだ、俺たちゃ神様の世話になんかこれっぽっちもなってねえんだ!もし、神や仏が本当にいるってんなら、ちったぁ俺にも幸せとやらをプレゼントしてくれよ!」




とあるカトリック系の病院

病室では少年の死を悼み、彼の亡き骸を囲み両親や医師、看護師たちが涙を拭いながら静かに賛美歌を歌った。


その歌声は星空に届くかのように聖なる夜にこだました・・・




天使





※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。









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.18 2015 小説 comment6 trackback0

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尾道貴志
miss.key 様

こんにちは。
マグリット好きなんです。
今年、東京で展覧会がありました。
見に行ってきましたが、素晴らしかったです(^^)

テーマとしては少し陳腐なのですがクリスマスに合わせて書いてみました。
いつもありがとうございます。

素敵なクリスマスを!
2015.12.22 02:26
miss.key
思いもかけず少年に助けられていた人々。でも誰もその事には気付かない。世の中大なり小なりそんなものでしょうか。最後の写真、マグリットの「大家族」そっくりですね
2015.12.21 20:54
尾道貴志
鬼藤千春 様

はじめまして。
ブログ拝見いたしました。
毎日の更新・・すごいです。
私は月イチペースのぐーたらですが、思い出した頃に更新しますので、これからもよろしくお願いいたします(^^)
2015.12.19 23:32
鬼藤千春の小説・短歌
はじめまして!あるブログを拝見していたら、このブログに出会いました。私もブログを開設しています。「鬼藤千春の小説・短歌」で検索できます。一度訪問してみて下さい。よろしくお願い致します。
2015.12.19 20:18
尾道貴志
sado jo 様

金城監督に映像化をお願いします(^^)

自分の手の届かないところで我々の運命は決まっているのでしょうか・・

素敵なクリスマスを!
2015.12.18 21:24
sado jo
おおっ!この階層感覚…いいですね~^^
時々、自分たちがいる場所は何か巨大な(生物とのか)存在の中で、自分達はその中にいる細菌なんだ。
と思う事があります。全ては人間の手の中には無いですよね(笑)
2015.12.18 10:19

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