招待状



駅

 
駅のホームに降り立ったのは彼女ひとり。

列車が走り去ると秋の凍てついた風が顔をかすめる。

誰もいないベンチに腰を下ろす。

バッグから一枚の封筒を取り出しあらためて広げてみる。

 
 招待状
 
 尾島早智子 様

   来る11月30日
 
   秋祭りにご招待いたします。

         片品村 村長


 
三日前に郵便受けに届けられていた。 捨ててしまおうとしたがそれをとどまったのには彼女の心の奥底にある思いがあったからだ。

「何よ!仕事ばかりで!もう少し時間を作ってくれてもいいじゃない!」
「仕方ないだろ、オレ一人じゃないチームでの仕事なんだ」
「だからといって、誕生日くらい何とかならないの!待ってる身にもなって!」
「わかってくれよ、これでも急いで帰ってきたんだ」
「もう、いい!わたし帰る!」

家を飛び出した早智子を徹が追いかけたその時である。

けたたましい急ブレーキの声とともに鈍い衝撃音が・・・

マンションの前の国道は夜になると長距離トラックが猛スピードで行き交う。
普段なら十分注意をするはずが、早智子を一点に見据えて飛び出した徹にその気持ちの余裕がなかった。


ひと月前の出来事である。
早智子は心の底から自分の行動を悔やんだ。

(あんなにひどいことを言って・・それが最後の会話なんて・・・)


ふと気づくと駅舎に人の気配が・・
 
「尾島早智子さんですね」

早智子が振り向くとそこには和服の女性が・・

「はい」
「片品村の村長で山科といいます」
「えっ女性の方?」
「そう、驚かれました?」
「あっ・・はい」

「よくいらしてくださいました」
「なぜ、わたしに招待状を?」
「婚約者の益田徹君・・一緒に来るはずだったでしょう」
「・・・はい、でも彼は・・」
「知ってるわ、辛かったわね」

暮れなずむ里山の畦道を二人はゆっくりと歩く。

「彼から手紙が来たの」
「いつですか?」
「一週間前」
「ありえません!」

瞬間・・沈黙が二人を支配した。

「そうね・・でも本当なのよ」
「どういうこと・・」
「この村には伝説がありましてね・・」
「伝説?」
「19年に一度、紅葉が真っ赤に色づく11月の晦日、日没とともに亡くなった人が現れるの、、それがこの村の秋祭り」
「そんな、おとぎ話じゃあるまいし・・」
「そして、今年がその19年に一度の年」
「えっ・・」
「誰よりも会いたい人と会って話をするの」
「信じられません・・」
「もっともだわ・・でも、だまされてみてもいいと思わない?」

早智子は戸惑う。
あり得ないこと、狐につままれたような話・・

「この招待状、徹君が送ったのよ」
「そんな・・」

握りしめていた招待状を見た瞬間早智子は目を疑った

差出人の名前が・・  益田 徹


「どうする、会う?それとも帰る?」

山々はシルエットになり、間もなく最後の光の一片が姿を隠そうとしていた。

早智子はしばらくうつむいていたがやがて両手を握りしめて顔を上げた。


「会いたい!!会って謝りたい!!」

大粒の涙を拭いもせずに早智子は大きな声で山科にすがりついた。

「お願い!徹に会わせてください!!」

山科は優しく微笑むと静かにうなずいた。

「よかったわ・・徹君もきっと喜ぶでしょう」

すっかり日が暮れた畦道は真っ暗だが遠い先に微かに灯りが見える。

「この道をまっすぐ行くと小さな鳥居があるわ、あの灯りの辺り、石のトンネルをくぐりなさい出たところが会場よ」
「はい!」
「私も行ったことがないのだけど、会えるのは明日の日の出まで」
「はい!」
「いってらっしゃい」

早智子は振り向いて深くお辞儀をすると、真っ暗な畦道をひたすら走った
涙が止まらない。

(会いたい!)
(会って謝りたい!)
(徹!ごめんなさい!!わたしを許して!)


暗闇に何度か転びそうになる・・
息が切れ、邪魔になるコートを道端に脱ぎ捨てる
やがて灯りが手の届くところに・・


再び転びそうになったとき、早智子は履いていたローヒールを履き捨て裸足のまま駆け出した。


そして、鳥居をくぐり光を目指し・・・







夜紅葉




※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。





 

 

関連記事
.16 2015 小説 comment2 trackback0

comment

-
sado jo さんへ

件の映画、見たいと思っていましたが未見です。
田舎の駅やいわゆる秘境駅に惹かれるんです。
そして、都会にはない生々しい生死の儀式や感覚。
田舎の持つ独特の雰囲気が怖さとともに何とも言えない魔力で自分を引き寄せます。
「犬神家の一族」を見るとゾクゾクしてしまいます。
脈絡のないお返事ですみません。

コメントありがとうございました。
2015.11.21 22:56
sado jo
死者との会話…ベストセラー小説で映画化もされた「いま会いにゆきます」を思い出しました。
ふと、思いを残すのは死者では無く、生き残った生者の方なのでは無いかな?と思ったりします。
2015.11.21 12:22

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://garakutakan2012.blog.fc2.com/tb.php/87-eb304544

新発売!

Kindle版

訪問者

来店中

現在の閲覧者数:

アルファポリス

投票ありがとう!

クリックありがとう

新着記事

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

星新一に出会う

オススメ  SFファンタジー

おすすめDVD

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

ブロとも一覧