「膨張」 -夏の夜話-

夏休み

満天の星空の下
バンガロー横の芝生にふたつの影

「パパ、すごい星の数だね」
「ああ、きれいだろう、山の上は空気が澄んでいるからな」
「いっぱい星があって、手がとどきそう」

父親は好奇心に満ち溢れた息子の目をチラリと見やると、嬉しそうに、そして満足そうにうなずいた。

「ねぇ、パパ、星に行けるかなあ、ぼく、星に行ってみたいんだ」
「そうだな、でも、どの星もとっても遠いんだよ」
「どれくらい?」

父親はまた嬉しそうに息子に向けて、自分が小さい頃に父に話してもらった知識を聞かせた。

「光の速さは1秒間に地球を7回半回る速さなんだ」
「1秒間に⁉️」
「うん、それだけ速い光でも、あの星にたどり着くのに、何万年もかかるのさ」

父親は夜空の中でひときわ明るく瞬く赤い星を指差した。
息子は目を丸くして父親の顔を見つめる。

「つまり、あの赤い光は何万年も前に光った光が今ようやく地球まで届いたものなんだよ」
「ふーん、何だか不思議だね」
「ああ、だから、もし今あの星が爆発したら、それは何万年も前に爆発していたって事になるわけさ」
「すごいな、宇宙って大きいんだね」
「うん、人間が想像もできないくらい広いんだ」
「ねぇ、パパ、もっと星の話を聞かせてくれる?」

父親は、息子の肩を引き寄せて言った。

「もちろんさ、せっかくの夏休みだもの」

息子は有頂天になって心にずっと秘めていた疑問を投げかける。

「ねえ、宇宙人は本当にいるの?」
「いるよ」
「ほんと⁉️」
「でも、クラスのともだちは、そんなのいるはずないって」

父親はちょっとふくれっ面になった頭を撫でながら続けた。

「宇宙は無限なんだ」
「むげん?」
「そう、無限だ」
「どういうこと?」
「そうだな、学校の砂場の砂の数を全部数えたら何粒になる?」
「そんなの数え切れないよ」
「うん、数えきれないよな、でも砂場の砂粒の数は有限・・限りがあるんだ、だからいつかは数えきれる。でも、宇宙の星の数は地球上のすべての砂の数よりも多いんだ、何しろ無限にあるんだからね」
「それで、無限だとどうなるのかな?」
「無限にある星の中で生命がいるのが地球ただひとつなんて、確率から考えてもあり得ないと思わないか?」
「でも、まだ誰も会ったことないよね」
「遠すぎて会えないだけさ」
「そうなんだ、じゃあ、いつか会えるね」
「ああ、きっと会えるよ」

息子は夢見心地で父親の話を聞いた。
そして尽きない疑問を投げかける。

「宇宙ってどれくらい広いのかな」
「そうだな、想像もつかないくらい広いんだ、ただ広いだけじゃないよ

宇宙は今こうして話している間にももの凄い勢いで《膨張》してるって事が

分かってるんだよ」

《ぼうちょう?》

「大きく「ふくらんでる」ってこと」

「最初は小さかったの?」
「そう、最初はね」

「ね、パパ、膨らんでる宇宙の果てには何があるの?」

その質問を聞いた時、父親はわずかにとまどった。

(宇宙の果てか・・確かに・・「膨張」してるって事は膨らんでいくその先に何かがあるわけだよな・・・)





「ユリちゃん、いらっしゃい!」
「なに、ママ」
「ほら、育てていたミニトマト、大きくなったわ」
「ほんとだ、おいしそう!」

「ついこの間まで小さかったのに、あっという間に

こんなに《ふくらんで》・・・

「大きくなるの早いのね」
「そうね、中には栄養がいーっぱいつまってるのよ」
「いっぱい?」
「そう、目に見えないくらい小さな栄養がいっぱい!」
「ねえ、ママ、ユリ、トマトもいでもいい?」
「いっしょにもごうか」
「うん」
「じゃいくわよ、せーの」



二人が夜空を見上げた時、大地が大きく揺れた気がした。
同時に夜空もまた、大きく、大きく・・・
そして、全天から大きな音が

プチッ




「ママ、美味しかったね」
「美味しかったわ」
「ちっちゃな宇宙みたい」
「栄養いっぱいの宇宙ね」
「ねぇママ、宇宙の先には何があるの?」
「宇宙の先かぁ・・・それはね・・・」




トマト



銀河







※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。










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.01 2015 小説 comment5 trackback0

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みんもっこす
第11回 自作小説トーナメント
優勝おめでとうございます。
またまた、まとめページに
http://minmokkos.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
リンクを貼らせて頂きましたので、
ご了承くださいませ。
2015.12.17 23:06
尾道貴志
miss.key さんへ

すごい発想ですね、全然違うかもしれませんが、クラインの壺とかメビウスの輪みたいな発想なのでしょうか、表も裏もない世界、なるほどこれなら果てがないことをイメージできそうです。無限ループ的なものですね。それにしても宇宙の果ては永遠の「謎」として続きそうです。

2015.09.03 01:17
miss.key
 完全に空想的仮説ですが、私の中には二つの宇宙があります。
 一つが風船。宇宙は風船の表面の様なもので広がってはいるが宇宙の果ては一点であり外と言うものはありません。
 もう一つがボールの表面を平行移動する輪の内側です。宇宙は広がる事によりその末端が収縮し、末端が一点に到達した瞬間にビックバンが起こります。広がりきった側は密度が低すぎて消滅します。その繰り返しが起きているというものです。
 いやもう、妄想以外の何ものでもありませんがね。
 >>>sado joさん 100万年は幾らなんでも短すぎますよ。100億年の間違いじゃないでしょうか?もっとも、私達の太陽はあと50億年位らしいですが。ついでに言うと20億年後には人間が住める環境ではないらしいです。
2015.09.01 22:10
尾道貴志
sado jo 様

100万年後の世界を見るには輪廻転生を繰り返さねばいけませんね。それでも地球の寿命は億単位でしょうから人類がいなくなっていたとしても何かがあるはずです。

このお話は人類の小ささを描いていますが、外の宇宙の先にもまた宇宙があるわけで。まるで合わせ鏡のように無限に続きます。

見てみたいですね、宇宙の果ての「先」(^^)

コメントありがとうございました。
2015.08.28 02:23
sado jo
宇宙は「成住壊空」を繰り返すと言うのが仏法の説です。
釈尊曰く、現在は住の終わり頃にあるそうで、人が争い、災害などが生じて壊に向かってるとの事です。
実際、天文学では多くの恒星の消滅が確認されており、宇宙の膨張は終りを告げようとしてるかも知れません。
100万年後には夜空の星はまばらになるそうで、夜歩きは辛くなるでしょうね。人類が生きてれば…の話ですが(笑)
2015.08.27 16:00

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