青い目をしたフランシス

 旅先のユースホステル

 食堂にとてもきれいな外国人の女性ホステラーを発見した。

 オレは旅の相棒「圭介」に持ちかける。
 「おい、声かけてみないか」
 圭介も乗り気だ。
 「いいな、お前、英語できるか?」
 「何とかなるんじゃない」
 ちなみにオレの英語の実力は英検3級である。中学生と変わらない。
 「よし、じゃんけんで負けた方がいくぞ」
 「おお」
 「じゃんけんボン!!」

 予想通り負けたオレは意を決して彼女ににこやかな笑みをたたえつつ近づいた。
 そして英検三級の英語力を駆使して話しかけた。

 「ハロー! ウェア アーユーフロム?」

 非常に高度な英語なので通訳すると

 「こんにちは!どこから来たんですか?」となる。

 彼女少し驚いたようにこちらを振り向くと笑みをたたえながら言葉を返してくれた。

 「☆И§■Д◎」

 「???」

 (なんか変だぞ、英語じゃない?)

 彼女はブロンドの長い髪に青い瞳、まるでフランス人形だ。
 そう、彼女はフランス人だったのである!
 オレは助けを求めるように圭介の顔を見た。

 「やばい、フランス語だ、わかる?」
 「分かるわけねえだろ!」
 
 パニックになるオレ達をよそに彼女は身ぶり手振りとともに画用紙を出してきてたどたどしいひらがらで名前を書いてみせた。

 「ふらんしす もーてぃま」

 「オー!!フランシス!!」

 オレ達は何だかわけがわからぬままに大げさに喜ぶと握手を求めた。

 こうしてオレ達は友達になった。

 カタコトの日本語と筆談も交えて話をしてみると、彼女も学生で友達と一緒に来日し、この日は単独行動という事である。明日どこへ行きたいかと聞くと「広島」という答えが返ってきた。そこで翌日は圭介の車で広島に行くことになった。

 翌日広島に着く、彼女はとてもまじめな学生で平和資料館の見学を望んだ。僕らももちろんOKし、3人で資料館をじっくりと見て回った。
 資料館の資料はもちろん非常に生々しく、悲惨なものの多い。この世の地獄といえる様々な写真や絵が真実をいやがうえにも突き付けてくる。
 
 その時、事件が起きた。
 見学していたフランシスが突然前のめりになって床に倒れたのだ!とっさに支えようとしたが、割と大柄だった彼女を受け止める間もなく、フランシスは顔から床に落ちた。
 予備知識のある日本人でさえ目を背けたくなる写真を見て、フランス人の彼女が貧血を起こしたのも無理からぬことであった。
「大変だ!」
 圭介が叫び、係員の人が救急車を呼ぶ、僕ら二人も救急車に乗り込んだ。
 救急車は貧血を起こして意識を失った彼女を市内の救急病院へと運んだ。

 病院で手当てを受けた後フランシスが診察室から出てきたのは30分ほどしてからであった。

 幸い、大きな怪我はなかったが、それでも顔面から床に落ちたため、顔には青あざができ、そして、前歯が半分欠けてなくなっていた。

「フランシス、だいじょうぶ?」
「ダイジョウブ、ワタシヘイキヨ」

 そのあと鏡を取り出して自分の顔と欠けた歯を見て彼女はニコッと笑って見せてくれた。
 
 頭を打っていたフランシスは念のため検査で一晩入院することになった。

 「おやすみ、フランシス、お大事に」
 「オヤスミナサイ、キョウハゴメンナサイ、ソレカラドウモアリガト」

 フランシスは欠けた前歯でまた笑って見せた。


 翌日、オレと圭介は朝一番で病室を訪ねた。

 「ボンジュール!フランシース!」
 「元気になったかーい?」

 オレ達は元気いっぱいに病室へと入っていった。

 「あれ?」
 「もしかして・・寝てる?」

 ベッドの布団からは頭が見えなかった、いや、それどころかベッドメイクされたようにきれいに掛布団がかかっている。

 オレは圭介に目くばせすると恐る恐る掛布団をめくる。

 「えっ・・」

 フランシスはいなかった。
 その代りに・・
 そこには白いドレスをまとったフランス人形が・・

 「これ・・フランシスじゃ・・ないよな」
 「ああ、もしかして、もう退院したんじゃね?」

 オレと圭介は目を合わせて首をかしげた。
 通りかかった看護士さんを呼び止める。

 「あの、昨日このベッドに寝ていた女の人なんですけど・・」

 若い女性の看護士はオレ達を不思議そうな目で見るとこう言った。

 「このベッドは三日前から空いてますけど・・」

 「昨日、フランス人の女性が運び込まれましたよね、ほら、頭を打って・・」

 「いえ、私は昨日から夜勤ですが、そういった方は・・」

 オレはきつねにつままれたように再び圭介と顔を見合わせた。

 
 オレと圭介はそのまま旅を続けた。
 今までと違っていたのは車の後部座席にフランス人形が乗っていることだ。

 「おい、オレ達が逢ったのは幻か」
 「幽霊にしちゃきれいだったよな」
 「真夏の夜の夢ってとこかな」
 「夢ならもう少し覚めないでほしかったな」

 オレはフランシスが倒れた時の衝撃と、欠けた前歯で見せてくれた笑顔が忘れられない。

 一月後、彼女から手紙が届いた、オレは圭介の下宿に手紙を持って行った。
 オレ達は向かい合って卓袱台の上に置いた手紙をしげしげと眺めた。
 手紙にはたどたどしいひらがなであの日のお礼がていねいに書かれてあった。そして、「フランシス・モーティマ」という和紙で作られた名刺が同封されていた。

 「圭介、これってどういうことだ?」
 「うーん、わからん」
 「彼女っていったい・・」
 圭介はしばらく黙った後、オレの顔を見て
 「・・・まあ、いいじゃないか!素敵な旅の思い出だ」

 オレ達は二人で名刺の両側を持ち、窓から差し込む日差しに透かしてみた。
 草緑の名刺に彼女の笑顔が浮かび上がった気がした。

 オレ達はどちらからともなく叫びたくなった。
 その声は部屋いっぱいにこだました。


 「オー!!フランシース!!!」

 
 窓辺に飾ってあった白いドレスのフランス人形がコトリと音を立てておじぎした。



フランス人形






※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。




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.01 2015 小説 comment6 trackback0

comment

尾道貴志
miss.key 様

日本でもよくありますよね。
髪の毛が伸びる日本人形とか
けっこう怖いんですけど・・

夜とかに動いたりしたら
チャッキーを思い出してもう降参です(^^)
2015.07.06 00:22
miss.key
人形には魂が宿ると言いますが、しかし不思議なお話ですね。
2015.07.05 23:50
尾道貴志
ユズキ さんへ

こんにちは。
おひさしぶりです。

「色んな思いを掻き立てられますね~」

うれしいコメントですねぇ

どうもありがとうございます(^^)

どこまでが実話かは・・あえて秘すことにしましょう(笑)



2015.07.03 01:16
ユズキ
おはようございます(^ω^)

ちょっとホラーだけど、ただ怖いだけじゃなくて、色んな思いを掻き立てられますね~。
しかし実話なんですか((((;゚Д゚))))!?
2015.07.02 05:42
尾道貴志
sado jo 様

コメントどうもありがとうございます。
これ実話を元に中味をデフォルメしたものなんです。
というわけで主人公は・・・

「オーフランシース!!」(^^)

素敵な夢でしたねぇ・・




2015.07.02 00:44
sado jo
世の中では、生きてる人間の方が人形らしい場合もありますが…(笑)
たとえ幻でも、人形の方が心を持つ人間らしい場合もあるんですね^^
さぞかし二人にはいい夢だった事でしょう。
2015.07.01 14:23

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