望み

国会議事堂前

シュプレヒコールの嵐が。

その先頭に立つ一人の男。

「原発反対!地球を汚すな!」

ひときわ大きな声で叫び続ける。

「こんにちは、NKBテレビですが、お話を伺ってよろしいですか?」
「ええ、我々の叫びをぜひ伝えてください」
「あなたの訴えとは?」
「地球を守ることです、どれだけ自然が壊され、地球が苦しんでいるか、あなただっておわかりでしょう」
「すごい意気込みですね」
「我々が声を上げなければ地球環境はひどくなっていくばかりです、私は負けません」

彼は力強く画面を見つめると再びシュプレヒコールを叫ぶ。



山麓にある木造の一軒家。
辺り一面に広がる田畑と目の前にそびえる緑の山々。

「ニュースをお伝えします、アマゾン川流域の森林がここ10年間で20%もの減少を見たと世界自然白書が伝えています」

「全く嘆かわしいことだ」

彼は小さなテレビ画面を見ながらつぶやいた、発電機を使い最低限の文明を享受しながら自給自足に近い生活。

「来週は森林資源保護の集会だな、自転車の整備でもしておくか」



ある夜。
人より早い就寝時間を迎えた頃、ノックの音がした。

「はい」
「こんばんは、ちょっとお話したいことがあるのですが」

彼は落ち着いたトーンの声に思わず家の扉を開けた。
そこには背の高い痩せた男が一人立っていた。

「ずいぶんとお怒りのようですね」
「どちら様で?」
「いえ、あなたの活動に共感しましてね、ぜひお話したいなと」

彼は少し考えたのちこう言った。

「どうぞ・・何もないところですが」

ランプの下、二人はゆっくりと腰を下ろした。

「あなたの自然を愛する心には感服いたします」
「それはどうも、それでお話というのは?」
「あなたのお役にたてればと思いまして」
「はあ」
「あなたの努力は素晴らしい、デモに集会、広報活動、そしてご自身のつつましやかな生活、あなたこそ環境保護を推し進めるリーダーにふさわしい」
「信念ですよ、自然を破壊することは絶対に許せない」
「でも、あなたの努力は残念ながら空回りかもしれない、どんなにシュプレヒコールを上げても、その間に自然は壊されていく、どうです、そう思いませんか?」
「何が言いたいのですか?」

男はおもむろにこう口にした。

「あなたの望むものを三つこの世からなくして差し上げましょう」
「アラビアンナイトですか、冗談ならお引き取り下さい」
「試しに一つ望んでみては、私を追い返すのはそれからでも遅くはないのでは」

彼はあきれたという顔をして

「それなら世界中の原発をなくしてみてください」

「了解しました」

男は軽く目を閉じるとこう伝えた。

「テレビのスイッチを・・」

男に促された彼は発電機のひもを引っ張り、テレビのスイッチを入れた。

「臨時ニュースです、日本各地の原子力発電所が忽然と消えてなくなるという情報が入ってきています、現在調査中ですが、続々と報告が政府へ入ってきている模様です、この現象は日本各地にとどまらず世界からも・・・」

「どうです?」

彼は目を丸くしながら男を見つめた。

「信じられない・・」
「でも、信じてくださいよ」
「魔法使いか超能力者か・・いや、よもや神・・」

「次は何を?」
「・・・では、工場だ、排気ガスを吐き出し続ける工場を!すべて消してくれ!」
「かしこまりました」

「ニュースの続報です、原発に続き湾岸の石油コンビナートが消滅したとの報告が・・」

「奇跡だ・・すぐには信じられない・・」

「最後の一つです」
「最後・・」

その時彼は幻想を見た。

伐り倒される森林、焼かれる田畑、埋め立てられる川、海に流れ入る汚染水、山を砕く大型の掘削機・・
ありとあらゆる破壊の映像が彼の頭の中を駆け巡った。

彼の顔は次第に紅潮し、体全体はわなわなと震えだした。
全身の怒りと顔の赤みが頂点に達した時


「決まりましたかな」

男が決断を促した。

彼は思わず声にした・・


「に・・人間を・・」


男の顔が微かに笑みを浮かべたように・・

「かしこまりました」


ニュースを伝え続けていたテレビから音が消えた。

やがて彼の体は脚から少しずつ透明に・・・


家の中が静寂に包まれたあと・・

小屋の入口から一匹の虫が光を放ちながら空に向かって・・・




死神誘い





※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。




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.01 2015 小説 comment11 trackback0

comment

-
miss.key さんへ

古い作品へのコメント ちょっと驚き また 感謝しました。
読んでくださる人がいるのだなぁ・・
僕は幸せ者です(^^)
ありがとうございました。

2015.11.17 01:10
miss.key
 人を滅ぼすのは人である。そしてその理由とは得てして悪意ではなく正義心であったりする。
 究極の平和=人類の絶滅。人間が悩みに悩んで行き着く究極論なんでしょうなぁ。桑原桑原。
2015.11.15 13:00
みんもっこす
ありがとうございます。
相互リンクして頂けて光栄です。

これからも、よろしくお願いします。
2015.06.20 02:25
尾道貴志
みん もっこす さんへ

ありがとうございます。

それでは相互リンクでお願いします(^^)
2015.06.20 02:01
みんもっこす
優勝おめでとうございます。
私のブログのトーナメント管理ページに
リンクを貼らせて頂きました。
http://minmokkos.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
不都合ありましたら、ご連絡ください。

またのご参加、お待ちしております。
2015.06.19 20:17
尾道貴志
みん もっこす さんへ

お互い頑張りましょう!

さあ、一回戦、勝ちあがれるかな(^^)
2015.06.14 23:30
みんもっこす
ご参加ありがとうございました。
私も、尾道さん主催のトーナメントなどがありましたら、
ぜひ、参加させて頂きますね。
2015.06.14 17:30
尾道貴志
お誘いありがとうございます。
では、参加させていただきます(^^)
2015.06.08 01:27
みん もっこす
そうなんですよねー。結局、根本は人間・・じゃなくて、人間の「心」ですよねー。
そういった意味では小説も、少しは人類・地球に貢献できるかもしれませんね。

お久しぶりです。自作小説トーナメント主催者の「みんもっこす」です。
過去の小説トーナメントを振り返り、
自己主催のトーナメントを、掌編~ショートショート向けにリニューアルいたしました。
http://minmokkos.blog.fc2.com/blog-entry-122.html
もし、よろしければ、ご参加お待ちしています。
2015.06.07 15:08
-
sado jo さんへ

今回もコメントをいただきありがとうございます。

「因果応報」人生を長くやっていくとこの言葉の深さが身に沁みます。
何をやっても最後は自分に返ってるのだとつくづく思います。

芸能人で亡くなる方が最近多いですが、多くの人から惜しまれている方はやはり生前に立派な生き方をしてきたのだなぁと。人間、死んだときにその人の真価が現れるのですね。

ちょっと話が逸れてしまいました。

ごめんなさい(^^)

2015.06.01 20:10
sado jo
因果の糸を手繰れば、元凶は自分だった。
「ネズミの嫁入り」の逆バージョンみたいな話ですね。
ネズミが壁に穴を開けるのも、人間が地球を食い尽くすのも宿命でしょうか?
2015.06.01 15:19

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