図書室の午後

小学校。
長く伸びた校舎の端。
板のスノコがきしむ渡り廊下。

30メートルほど離れた先に木造の古びた図書室がある。
雑木林の中の図書室は校舎とは別棟にあるためか、はてまたその不気味なほど静かなたたずまいのためか、子供たちはあまり足を運ばなかった。

薄暗い図書室の一番奥の本棚の横に小さなベンチがある。
守はこの場所が好きだった。
友達がいないわけではなかったが、教室の喧噪のなかで午前中を過ごすと無性に心が静寂を求めた。

昼休みになると仲間がドッヂボールやサッカーに興じる中、ひとりこの場所へ足を運ぶ。
木造家屋のカビ臭い匂いと本の独特の香りが守の心を癒した。


ある日、守は本棚の一番高い隅にある本を見つけた。

背表紙に 「北川 守 第1回」 とある。

(ぼくの名前だ・・)

守は踏み台に乗り背伸びをしてその本を手に取った。

(えっ・・ これ・・題名だ)

自分と同じ名前の人が書いた本だと思ったのに・・

厚さは3センチ程、赤い布地の立派な装丁だ。
ベンチに腰かけてゆっくりと表紙を開く。

(えっ・・・なに、これ?)

守は思わず声を上げそうになった。

「北川 守」

西暦20XX年 4月18日 北海道 ウトロ島にて生まれる。

(これ・・ぼくのことだ!)

そこには守が生まれてから1歳になるまでの1年間が1ページごとに日記のように綴られていた。
1日の出来事とそこに添えられた写真。
守は自分が成長する姿をページを繰りながら追っていった。

やがて、365ページ目を読み終えると守は静かにページを閉じた。
何だかいけないものを見てしまったような気がした。
そして、誰にもこのことは話してはいけない気がした。
守は踏み台に上がるとそっと本棚に本を戻した。


それから半年の間
守は図書室に来ては自分の生い立ちを飽きずに読み続けた。
ひと月ほど経つと背表紙の回数が増えるのだ。
「北川 守 第2回」
そこには1歳から2歳までの記録が・・

そして「第9回」を読み終えたのは夏休み最後の8月31日の午後のことである。
気だるい午後の木漏れ日が昼でも薄暗い窓の外の雑木林にかすかに揺れている。

夏休み中も毎日のようにこの場所に来ては不思議な時間にふけった。
守はふと思った。

(ぼくは10さいだから・・・この次はどうなるのかな・・)

その時だ、守は人の気配を感じた。

「あら、守くんじゃない」
「あっ雪子先生、こんにちは」
「君、本、好きだったわね」
「はい」
「あら、校長先生・・」
「おや、富永先生と北川君じゃないですか、夏休みの宿題の仕上げかな」

守は笑顔で話す校長先生を見上げた。
次の瞬間、守の目はある一点を凝視していた。

「その本・・・」

守の少し驚いたような声に雪子先生と校長先生も思わず顔を見合わせた。

三人はお互いに手に抱えた本をギクッとした様子で見つめた。

「北川 守 第9回」
「富永 雪子 第28回」
「藤堂 勝利 第59回」




メキシコ高原のとある天文台では世界中から集められた天文学者とNASAの技術者、それに先進国の政府高官が血眼で前面の大型モニターを見つめていた。

「おい、どうにかならんのか!!」

「軌道はとらえましたが、いかんせん標的がデカすぎます!!」

「とにかく、ミサイルの発射だ、このままじゃ・・・」

「発射準備!5分前・・・用意!!」





「雪子先生、その本」
「守くんも・・なの」
「校長先生もお持ちなんですか」
「うむ・・君たちも同じ本を読んでいたのだね・・」

三人は不思議そうに顔を見合わせた。




「おい、まだ準備はできないのか!!急げ!!」

「発射準備1分前!!」





「校長先生、こんな不思議なことってあるんでしょうか?」
「いや、私も夢か幻かそんな思いでここに来てたんだよ」
「校長先生・・あれ・・」

守が指を指した先には赤い布地の背表紙の3冊の本があった。

「ぼく・・のぼってとってきます」

守はいつものように踏み台に上ると背伸びをして3冊の本を手に取った。




「おい!!急げ!!時間がないぞ!!!」

「発射準備!!・・・ダメだ!! 間に合いません!!!」





守は踏み台から降りると手にした本を二人に手渡した。
3人は本の表紙を見た瞬間、ギクっとして互いに顔を見合わせた。




「北川 守 最終回」

「富永 雪子 最終回」

「藤堂 勝利 最終回」




その時・・薄暗い図書室の窓から眩しすぎるくらいの光が・・・・・






衝突






※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。









関連記事
.02 2015 小説 comment8 trackback0

comment

尾道貴志
いちご さんへ

はじめまして。
コメントをいただきありがとうございます。
こうして見知らぬ方と出会えたことに感謝します。
僕もぜひおじゃまさせてください。
これからもよろしくお願いします(^^)
2015.03.29 23:45
いちご
はじめまして。
ブログランキングから来ました。
この話読んで、すごく怖かったです。
でも面白い!
こういうお話書きたいなと思いました。
わたしもただ今小説を書いています。
また読みにきますね。
2015.03.28 23:56
尾道貴志
ユズキ さんへ

こんにちは。
感想ありがとうございます。
面白かったの一言、何よりの励みになります(^^)
読んでくれている方がいるんだなぁと実感します。
感謝☺️

また、お邪魔させていただきますね(^^)

2015.03.04 22:10
ユズキ
こんにちわ(^ω^)

不思議な本の登場で、守君は自分の先のことも読んでいってしまうのか・・・と思いきや、なにやらミサイルがワーワー状況が挟まって、まさか学校に直撃か? とドキドキしてたら地球が最終回に((((;゚Д゚))))

こんな本あったら読んでみたいな~とか思ったけど、最終回まで普通に読めるとしたら読みたくないかもと思っちゃいました><!

最終回の本が3人共通と重なる中での世界の終わり、面白かったです(´∀`)
2015.03.04 16:00
尾道貴志
sado jo さんへ

陳謝など全く持って恐縮です。
来ていただけるだけで感謝の気持ちでいっぱいです。

書くのに忙しい・・素晴らしい!
僕など月に一度更新できるかどうかという劣等生です。

何十億という地球の時間を24時間時計に喩えると、人類の繁栄など1秒にも満たないとのこと。我々は11時59分59秒の中にいる。

日付が変わるときに何が起ころうと不思議ではあません。

日々のありきたりな平和に感謝・・
2015.03.04 01:42
sado jo

書くのに忙しくてなかなかコメントできませんが…(陳謝)
まぁ、いずれ人類も恐竜たちと同じ道をたどるのは間違いありませんが、
反目し合って滅びるか?手を取り合って最期を迎えるか?どっちを選ぶんでしょうね。
2015.03.03 13:30
尾道貴志
miss.key さんへ

いつもコメントをいただきありがとうございます、とても嬉しいです。
核戦争は「終末」という作品で描いたことがありまして、その時、核戦争は避けようと思えば避けられるけど惑星衝突はより絶望的でその分より怖いな・・と。もし不運にも自分が遭遇するならば、知らないまま最期を迎えたいと願います。
日本映画で「フィッシュストーリー」をご存知ですか?彗星衝突が伏線となっている作品ですが最後3分間で痛快な大ドンデン返しが味わえます(^^)
いずれにせよ、僕らが今生きているのは数限りない偶然の重なりからなる産物なのですね。
2015.03.03 01:25
miss.key
うは、ちょっと衝撃。天体衝突なんですな。うーむ。非日常的でありながら、何時起きても不思議ではない現実。生きている事事態が奇跡ですね。隕石の落下で一瞬にして死に絶えた星もこの広い宇宙には数多あるのでしょうなぁ。そういうの考え出すと怖い。ところで、核に置き換えても面白いかもと思いました。
2015.03.02 23:55

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://garakutakan2012.blog.fc2.com/tb.php/73-16f455e6

新発売!

Kindle版

訪問者

来店中

現在の閲覧者数:

アルファポリス

投票ありがとう!

クリックありがとう

新着記事

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

星新一に出会う

オススメ  SFファンタジー

おすすめDVD

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

ブロとも一覧