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春遠からじ・・・

星空 画像


窓の外には全てを吸い込むような静寂ときらめく無限の星々・・
そこには非日常でありながら永遠に変わらぬ日常があった。

「おい、地球を出発してどれくらいだ」
「はい、およそ5年といったところでしょうか」
「すまん、聞かなくてもよかったな」
「いえ、私も同じことを思っていました」

最新鋭の宇宙船は地球と変わらぬ快適な船内環境が整えられていた。
食事も空気も新鮮で常に適切な室温と湿度に保たれ病気にかかる心配もない。

「タイラ、君の故郷は沖縄だったな」
「はい、キャプテン」
「四季は一応・・あるのかな?」
「ええ、でも私の島は本島のさらに南ですのでほぼ常夏という感じでした」
「そうか」
「キャプテンは・・確か北海道でしたね」
「ああ、寒さの厳しいところでな、でもだからこそ春が来るのが本当に待ち遠しかったもんだ」
「なるほど」
「雪が解けると草花は一斉に芽吹き、花を咲かせる・・夏は短いが青い海と空、白い雲の下に草の萌える緑が目にまぶしい」
「素敵ですね」
「今一番触れたいのが肌で感じる四季の移り変わりだ、この宇宙船で最もないものだからな」

二人の会話を空気清浄機の微かな機械音が静かに吸い込んでゆく。

会話が途切れ元の日常に帰ろうとしたとき。
静かな空気の中、一斉にブザーの音が鳴り響いた。

「どうした、緊急事態か?」
「いえ、遥か前方に惑星の発見です」
「そうか・・今回こそ期待したいものだな」
「はい、今までの星は残念ながら移住には不可能な環境ばかりでしたからね」
「よし、時間をかけてじっくり調べてくれ」

「キャプテン、概要が分かりました」
「大きさは地球の約1.2倍ほど、自転速度、公転周期も地球によく似ています」
「地軸の傾きも地球とほぼ同じです、これなら四季もありそうですよ」
「四季か!」

タイラの報告にキャプテンは思わず頬を紅潮させた。

「先乗りさせた探査ロケットの解析から酸素と水の存在も確認できました」
「そうか、生物の存在は?」
「送られてきた映像からは確認できません」
「到着までどのくらいだ」
「はい、およそ7日です」

二人は様々な思いを胸に七日間を過ごした。
五年間の「平和」だが「退屈な」毎日はいやがうえにも期待を膨らませる。

「着陸予定地点は恒星からの距離と地軸の傾きから計測すると、地球での季節は春の始まりというところです」
「春か・・懐かしい響きだ」

やがて宇宙船は二人の期待と地球の未来を夢見て惑星に静かに着陸した。

「無事に着陸した、外の様子はどうだ」
「キャプテン、酸素も水も確かにあります、しかし・・」
「しかし、どうした?」
「外に出られそうにありません」
「なぜだ?」
「気温です、外気温はマイナス80度・・宇宙服を着ても行動できない温度です」
「そんなに寒いのか・・やむをえん・・何日か観察したら飛び立とう」
「この宇宙船は摂氏1000度でもマイナス500度でも耐えられますからね」

キャプテンはうらめしそうに窓から外を眺めた。

「キャプテン、報告です」
「外気温が上がりました」
「そうか、宇宙服を着て外へ出てみよう、とにかく外の空気が吸ってみたい」
「それが・・今度は暑いんです」
「暑い・・どのくらい?」
「摂氏80度です、昨日と寒暖差が160度もあります」

その後も外の温度は凍えるような寒さの日が何日か続いたかと思うと今度は灼熱の日が数日続く・・
といった日々を繰り返した。

「タイラ、決断だ、離陸しよう」
「はい、生物が見当たらないのもうなずけますね」

宇宙船はゆっくりと地表から飛び立ちやがて静寂な宇宙空間へと消えていく。

「キャプテン、残念でしたね」
「何がだ?」
「季節を味わうことができなくて」
「タイラ、僕らには見えなかったがもしかすると生物たちが身を潜めていたのかもしれない」
「あんな環境でですか?」
「ああ、じっと春を待っていたのかも・・」


「三寒四温をくり返し・・・」


空気清浄機のダクトから微かに梅の花の香りが・・・



冬来たりなば





※ 作品の画像の中には自分で撮影したもの以外にネット上からお借りしたものがあります、問題があればご指摘ください、削除したします。












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.19 2019 小説 comment2 trackback0

comment

尾道貴志
sado jo さんへ

お返事が遅くなりごめんなさいm(__)m。
冬眠が長すぎてリハビリ中です(笑)
最近の極端なジグザグ気候を肌で感じて「三寒四温」という言葉が浮かびました。宇宙の三寒四温はさぞかしスケールが大きいんだろうな・・
そんな小編です。
深く読んでいただき恐縮です・・
コメントありがとうございました。
2019.03.04 00:29
sado jo
生物として進化してきた人間にとって、今の地球は最適の環境にあるのかも知れません。
しかし、別種の生物から見ればとても生命活動には適さない環境にあると考える事もできます。
現に、地下深くや深海の熱水溜まりには、今の地球環境に合わない生物達が身を潜めて時を待っています。
きっと、遠い未来に環境が変化して人類が地上から姿を消せば、地球は彼らが繁栄する星になるのでしょう。
2019.02.21 14:25

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